皆様は「軒天」と聞くと、住宅のどの部分かすぐに思い浮かべることができるでしょうか?
軒天とは、屋根の端が外壁よりも突き出ている部分の裏側にある天井部分を指します。玄関やベランダに出た際、上を見上げたときに見える屋根の裏側の板や仕上げ材の部分になります。軒天の役割や塗装が必要な理由をご紹介いたします。
- 軒天とはどこ?役割を解説
- 軒天の塗装が必要な3つの理由
- 軒天の素材によって異なる塗装方法を比較
- 軒天塗装のDIYは可能?プロに任せるべきケース
- 自分で塗装したい方のためにDIYで軒天塗装をする方法

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
軒天とはどこ?役割を解説
軒天とは、屋根の端が外壁よりも突き出ている部分の裏側にある天井部分を指します。
住宅の具体的な軒天の箇所としては、以下のような場合があります。
- 屋根の軒下(外壁より出ている屋根の裏側)
- 玄関ポーチの屋根の裏側
- ベランダやバルコニーの屋根の裏側
- ベランダの床の裏側(1階から見える部分)
- 勝手口上の小さな屋根の裏側
- 下屋根(1階のみにある屋根)の裏側
軒天には役割があり、一般的に言われている軒天の役割がこちらになります。
- 雨よけ
- 直射日光を避ける
- 延焼防止
- 屋根裏に湿気が溜まるのを防ぐ
しかし、近年では住宅のデザインの進化により、軒天が小さい家や軒天自体がない家も増えてきました。そのため、軒天の役割は、住宅のデザインによって大きく違いがあります。
▼住宅のデザインによる軒天の役割の違い▼
住宅のデザイン | 写真 | 軒天の役割 |
下屋根と2階の両方に |
![]() |
雨よけ 直射日光を避ける 延焼防止 屋根裏に湿気が溜まるのを防ぐ |
2階に軒天がある | ![]() |
雨よけ 直射日光を避ける 屋根裏に湿気が溜まるのを防ぐ |
玄関のみに軒天がある | ![]() |
出入りの際の雨よけ |
軒天には以上のような役割がありますが、住宅のデザインによって軒天が果たしている役割には違いがあります。
軒天の塗装が必要な3つの理由
軒天は適切なメンテナンスを行わないと、前項でお伝えした役割を果たすことができません。
軒天が住宅にとって重要な役割を果たす為に、軒天の塗装が必要になります。
- 防水性を高める
- 防火性能を高める
- カビ・腐食の防止につながる
防水性を高める
軒天の塗装をすると、防水性を高めることができます。
軒天自体は、直接雨が当たらない場所のように思われがちかもしれません。しかし、雨風によって水しぶきが舞い上がったり結露が発生したりすることがある為、実は湿気にさらされやすい場所になります。特に木製の軒天は水分を吸収しやすく、カビや腐食・シミの発生の原因になってしまいます。
塗装によって防水性を持たせることで、軒天の劣化を防ぎ長期的に住宅の寿命を延ばす効果が期待できます。
軒天を塗装しないと起こる可能性があるトラブルがこちらになります。
- カビ・藻の発生(美観が損なわれるだけでなく健康にも悪影響を及ぼす)
- 塗膜の剥がれ(防水機能が失われ、素材の劣化が進行)
- 木部の腐食(軒天の交換が必要になり修繕費が増加する可能性)
軒天の見た目が大丈夫でも、内部では腐食が進んでいる可能性もあります。定期的な塗装が、将来的な高額修繕を防ぐとご理解いただきたいと思います。
防火性能を高める
軒天の塗装をすると、防火性能を高めることができます。
軒天は屋根の裏側にある為、火災が起きた際に炎が屋根裏まで回り込みやすい場所です。もし軒天に防火性能がなければ、火の勢いで屋根裏に燃え広がり住宅全体の焼失リスクが一気に高まります。
軒天は、防火性に特化した材質が使用されているケースが多くあります。しかし、せっかく防火性に特化した材質を使っていても、適切に塗装をしていないと劣化してしまいます。そのため、軒天を塗装し、防火性能を維持することが大切なのです。
軒天の塗装は、命と財産を守るうえで非常に重要であるとご理解いただきたいと思います。
カビ・腐食の防止に繋がる
軒天の塗装をすると、カビ・腐食の防止に繋がります。
軒天には通気口が設けられていることが多く、屋根裏の熱気や湿気を外に逃がすという役割を担っています。そのため、軒天を塗装することによって、夏場の熱こもりや冬場の結露によるカビ・腐食の防止に繋がります。
しかし、塗装を放置するとカビなどが付着して、通気性が失われて内部に湿気がこもってしまう可能性があります。そうなると、住宅の構造に悪影響を与えてしまう恐れがあるのです。カビ・腐食が発生すると起こる悪影響がこちらになります。
- 古い塗膜やゴミが通気口を塞ぐ
- カビなどが塗膜の劣化でこびりつき空気の流れが遮断される
- 屋根裏に湿気がたまり断熱材や木材の腐食・カビ発生に繋がる
以上のように、カビ・腐食を防止し住宅の構造を守るためにも軒天の塗装が必要になるのです。
塗装は単なる見た目のメンテナンスだけでなく、快適な住環境を保つために重要であるとご理解いただきたいと思います。
軒天の素材によって異なる塗装方法を比較
軒天は素材によって塗装方法が異なります。
そのため、ご自宅の軒天に使用されている素材を見極めて、適切な塗装方法をご判断いただきたいと思います。
▼軒天の素材別の見極め方▼
素材 | 写真 | 見た目 | 質感 |
ケイカル板 | ![]() |
白~淡いグレーで 板と板の間に直線的 な目地がある |
少しザラザラ |
ガルバリウム鋼板 | ![]() |
金属特有のツルっと した表面 |
サラサラ ツルツル |
ベニヤ板 | ![]() |
木目風のプリント | サラサラ ツルツル |
無垢木材 | ![]() |
木の節・木目の流れ が自然で不均一 |
ややザラザラ |
▼軒天の素材別の塗装方法▼
素材 | 写真 | 塗装方法 |
ケイカル板 | ![]() |
密着性に優れたカチオン系塗料を 中塗り・上塗りと2回塗り |
ガルバリウム鋼板 | ![]() |
サビ止め効果のある下塗り塗布後に 中塗りと上塗り |
ベニヤ板 | ![]() |
塗料の密着性を高める下塗り塗布後に 中塗りと上塗り |
無垢木材 | ![]() |
防腐剤入り下塗り塗料を塗布後に 中塗りと上塗り |
軒天は見えにくい場所ですが、素材に合った塗装方法を選ばないと剥がれや通気不良の原因になります。
そのため、ご自宅の軒天の素材をお確かめいただき、素材に合った塗装を行うことが重要です。
軒天塗装のDIYは可能?プロに任せるべきケース
軒天の塗装は、住宅の美観や耐久性を保つために重要なメンテナンスのひとつです。しかし、「自分で塗装できるのか?」と考える方も多いかもしれません。
実際にDIYで挑戦することも可能ですが、プロに任せることで得られるメリットも少なくありません。そこで、軒天のDIYとプロの塗装ではどのような違いがあるのか、主要なポイントを比較したのがこちらになります。
▼軒天塗装のDIYとプロとの違い▼
項目 | DIY | プロ |
費用 | 安い | 高い |
仕上がり | △ | ◎ |
作業効率 | △ | ◎ |
安全面のリスク | 高い | 低い |
耐久性 | △ | 〇 |
保証・アフターフォロー | × | 〇 |
表でご覧いただくとDIYにもメリットはありますが、すべてのケースでメリットがあるとは限りません。そのため、軒天塗装をプロに任せるべきケースをご紹介いたします。
高所作業が必要な場合
一つ目は、高所作業が必要な場合になります。
「脚立で手が届けば自分で塗れるかも」と思う方は少なくないかもしれません。しかし、軒天は高い所だと屋根のすぐ下になり、地上から3〜4メートルもの高さになります。作業中にバランスを崩したり手元がふらついたりすれば、転落やケガのリスクは想像以上に高くなってしまいます。
また、塗料や刷毛を持っての高所作業は腕も疲れやすく作業効率も落ち、予想以上に時間がかかる作業になります。
プロであれば足場を組んで安全に作業を行い、作業もスムーズに進みます。安全性を最優先に考える必要がある為、高所作業の場合はプロへの依頼がおすすめだとお考えいただきたいと思います。
▼プロに任せるメリットとDIYのリスク▼
プロに任せるメリット | DIYのリスク |
足場設置で安全に作業 | 脚立では不安定で転落の危険あり |
作業効率・精度も高い | 道具を持っての作業は難易度が高い |
劣化が進行している場合
二つ目は、劣化が進行している場合になります。
「軒天が汚れているから、上から塗ってキレイにしよう」とDIYする方も多いかもしれません。しかし、軒天が汚れているということは、劣化が進行している可能性が高くなります。
例えば、塗膜が剥がれや雨染み・カビがある場合、雨水の浸入や通気不良による劣化のサインになるのです。その場合、DIYで上から塗ってしまうと内部の腐食やカビが進行し、後々大きな補修費用がかかる可能性もあります。プロであれば劣化状況を見極めて、適切な下地処理や塗装の選定を行い対応できます。
軒天の劣化が進行している場合は、プロに任せて適切なメンテナンスが必要であるとお考えいただきたいと思います。
▼プロに任せるメリットとDIYのリスク▼
プロに任せるメリット | DIYのリスク |
適切な下地処理・塗料の選定が可能 | カビなどの処理が不十分だと建材が傷む |
劣化の進行を防止できる | 表面だけ塗っても根本の解決にならない |
防火性を重視したい場合
三つ目は、防火性を重視したい場合になります。
軒天は、火災時に炎が屋根裏へ燃え広がる「延焼経路」になりやすい場所です。特に隣家との距離が近い場合は、外からの火が軒下に入り込むことで屋根裏全体が一気に燃えてしまうリスクも考えられます。
そのため、軒天の塗装を適切に行うことが、防火対策として非常に重要になります。プロであれば防火性能に優れた塗料を選定し、住宅の構造に合った防火施工をしてくれます。
家を守るための塗装は、見た目だけでなく燃えにくさも大切であるとご理解いただきたいと思います。
▼プロに任せるメリットとDIYのリスク▼
プロに任せるメリット | DIYのリスク |
火災時の延焼リスクを抑える塗装が可能 | 防火性に優れた塗料の選定が適切にできない |
家と家族を守る防火対策になる | 適切に塗装しないと防火対策できない |
通気口がある軒天の場合
四つ目は、通気口がある軒天の場合になります。
軒天に換気機能付きの通気口が設置されているケースがあります。これは屋根裏の湿気を逃すための重要なパーツです。DIYで軒天と一緒に通気口を塗ってしまうと、通気口が目詰まりして屋根裏の結露・カビの原因になる可能性があります。
プロであれば、通気を妨げないように通気口を避けた施工を行ってくれます。軒天に通気口がある場合は、快適な住環境を守るためにもプロにお任せいただけますようお願いいたします。
▼プロに任せるメリットとDIYのリスク▼
プロに任せるメリット | DIYのリスク |
通気を確保した丁寧な施工 | 通気口を塗料で塞ぐと湿気がこもりやすくなる |
住宅内部の劣化リスクを防げる | 屋根裏の結露やカビの原因になる可能性がある |
時間や手間をかけたくない場合
五つ目は、時間や手間をかけたくない場合になります。
DIYでの塗装は思っている以上に工程が多く、養生・下地処理・塗装・後片付けまで含めると1日では済まない場合もあります。さらに塗りムラや塗料の選択ミスでやり直しが発生すれば、想像以上に時間や手間がかかってしまいます。
また、時間がかかると天候に左右される可能性もあり、悪天候で塗装のやり直しが発生してしまうかもしれません。そうなると、「結局プロに頼んだほうが早くて安上がりだった」と後悔してしまう可能性も高くなります。
短期間で確実に美しく仕上げたいなら、経験豊富なプロに任せるのが効率的であるとお考えいただきたいと思います。
▼プロに任せるメリットとDIYのリスク▼
プロに任せるメリット | DIYのリスク |
短期間で美しく仕上がる | 養生・準備・塗装に時間がかかる |
手間や再施工のストレスがない | 時間がかかると天候に左右されやり直しになる |
自分で塗装したい方のためにDIYで軒天塗装する方法
自宅の軒天をDIYで塗装したいという方の為に、自分で軒天を塗装する方法をご紹介いたします。
1.下地処理(ケレン作業)
サビや旧塗膜などを除去し塗料の密着性を高める為に、ケレン作業で下地処理を行います。
塗膜が剥がれている場合は、そのまま塗料を塗っても新しい塗膜も一緒に剥がれやすくなり密着不良の原因になってしまいます。
しかし、軒天のケレン作業は、状況によって必要な場合と不要な場合が異なります。
▼軒天のケレン作業の有無▼
状況 | ケレン作業の必要性 |
塗膜劣化・剥がれ | 必要(塗料の密着性確保) |
カビや藻・チョーキングがある | 軽度のケレン作業が効果的 |
塗膜が良好で軽微な劣化 | 不要 |
ガルバリウム鋼板(金属素材) | 必要(サビや旧塗膜を落とす) |
以上の状況に合わせてケレン作業が必要がどうかを判断するのが重要です。
2.養生
軒天には照明や通気口がある為、塗料が付かないように養生でしっかりと覆う必要があります。
また、軒天付近にあるサッシや窓枠にも養生が必要であるとお考えいただきたいと思います。
3.洗浄
汚れや旧塗膜を落とす為に、しっかっりと洗浄します。これらをしっかり落とさずに塗装すると塗料が密着せず、すぐに剥がれる原因になります。
プロの塗装業者は、業務用の高圧洗浄機を使って洗浄します。しかし、DIYでの塗装を検討している方には、家庭用高圧洗浄機の使用はおすすめできません。洗浄力が足りなかったり水が住宅内部に侵入するリスクがある為、悪影響を与えてしまう可能性があります。
DIYで行う場合は柔らかいスポンジなどを使用し、手洗いでの洗浄がおすすめです。少し手間はかかりますが、住宅へのリスクを軽減する為に手洗いでの洗浄をお願いいたします。
4.塗料の塗布
洗浄後にしっかりと乾燥したら、塗料を塗布します。
外壁塗装は基本的には下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りになりますが、軒天は素材によって塗る回数が異なります。一般的な住宅に採用されているケイカル板は、中塗りと上塗りの2回塗りになります。
軒天の塗装回数は素材によって異なりますが、大切なのは素材に合った塗料の選定と正しい手順で丁寧に塗装を行うことです。そうすることで、軒天の耐久性や美観を長く保つことができ、住宅全体の保護にも繋がります。
DIYで軒天の塗装を行う場合は、素材ごとの特徴を理解し適切な施工が必要であるとお考えいただきたいと思います。
まとめ
軒天とは、屋根の端が外壁よりも突き出ている部分の裏側にある天井部分になります。現在の住宅の多くは、雨よけなどの利便性のために軒天がある場合が多いかもしれません。
軒天は以上の役割を担っている為、軒天の塗装が必要になります。
- 防水性を高める
- 防火性能を高める
- 通気性を確保する
軒天は素材によって塗装方法が異なります。DIYで塗装することも可能ですが、プロに任せることで適切なメンテナンスを行えます。
軒天は皆様の安全な暮らしを支える大切な部分になります。そのため南大阪ペイントセンターでは、外壁塗装とあわせて軒天の補修・塗装も丁寧に施工させていただきております。
もし軒天のことで気になることやお困りごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。