屋根塗装を検討していると「縁切り」という言葉を目にすることありませんか?馴染みのないこれらの言葉…実は屋根塗装をする上で絶対に欠かせない重要な工程なんです!
縁切りをきちんと行わないと、雨漏りの原因になったり屋根材そのものの寿命を縮めてしまうことも…
今回のこちらの記事では屋根塗装における「縁切り」とは何か、なぜ重要であるのか、そして注意するべきポイントなどわかりやくまとめております。ぜひご一読ください!

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
屋根塗装における縁切りとは?
縁切りとは、屋根塗装をしたあとに塗料同士がくっつくことを防ぐために隙間を作る作業のことです。隙間をつくるために塗料と塗料の間にカッターで切り込みをいれていきます。
屋根の種類がスレート(カラーベスト)の場合、耐久性や防水性に大きな影響を与えるため、必須の工程です。
2.スレート屋根に塗装するなら「縁切り」は必須!
新築時の屋根には隙間が確保されているため、屋根に落ちた雨水は自然と排水され溜まることはありません。
しかし屋根塗装を行った屋根は、スレート屋根とスレート屋根の隙間に塗料が溜まり、雨水が流れる隙間がなくなってしまうのです。
隙間がなくなり雨水が溜まった屋根は、雨漏りを引き起こすリスクがあるため、隙間を作る作業「縁切り」を行います。
2-1.縁切りが必要な理由
・雨水の排水経路を確保するため
スレートの下に入り込んだ雨水は、縁切りされた隙間から流れる仕組みになっています。雨水の排水経路を確保するため縁切りが必要です。
・屋根裏への漏水をふせぐため
水の逃げ場がなくなると、屋根裏内部へと侵入し、最終的に屋根裏や室内に雨漏りを引き起こしてしまいます。
2-2.縁切りをしなかった場合に起こるトラブル事例
こちらの松原市のお宅では、屋根塗装をした際に縁切りを行わなかったため、雨水の逃げ道が塞がり屋根材内部に雨水が留まっていました。
そのため屋根裏から外壁内部を伝って、1階2階のお部屋という思いもよらぬ場所からの雨漏り被害に発展していたのです。
部屋の中を確認してみると、雨水が染みた跡や、雨漏りによるクロスの剥がれが見られます。
↑スレート瓦の隙間に雨が染みた跡があるのが分かりますか?
スレート瓦はとても薄くその厚さはわずか5mmです。塗装をすることでスレート同士の隙間が塗料で埋まってしまい、雨水の逃げ道が塞がり雨漏りの原因となってしまうのです。
詳しくはこちらのブログに掲載しております。ぜひご覧ください。
松原市で屋根の縁切り不足による雨漏りを適切な屋根塗装で解決
2-3.【例外】スレート屋根でも縁切り不要なケースとは?
スレート屋根でも以下の条件では縁切りが不要なケースもあります。
・勾配の激しい屋根
勾配が激しい屋根は縁切りが不要です。
一般的に5寸勾配以上の屋根に縁切りが不要とされており、勾配が急であればあるほど雨水が自然と流れ落ち塗料も溜まりにくいためです。
ですが、勾配が急だからと言って必ずしも縁切りが不要であるといったわけではありませんので一度業者と相談して屋根を点検してもらいましょう。
・塗膜が非常に薄く施工されている場合
こちらは極めて稀なケースですが、重ね塗りをしないクリア塗装など塗膜が薄く施工されていない場合も縁切りが不要な場合があります。
・先端に浮きや反りがある屋根
屋根の先端に3~5mmほどの浮きや反りが生じている箇所は縁切りが不要です。
塗装をしても反りや浮きの隙間から雨水を排水することができるからです。特に日当たりの良い箇所では経年劣化によって反りや浮きが生じやすいです。
・吹付塗装の場合
屋根塗装は主に「ローラー塗装」と「吹付け塗装」があります。ローラー塗装はローラーを使用し手塗りをしていく方法で、吹付け塗装はスプレーガンを使って塗装していく方法です。
ローラー塗装の場合、塗料の溜まりが起こる為、縁切りでの隙間確保が必要になりますが吹付け塗装は隙間にまで塗料が届かないため縁切りは不要とされています。
3.縁切りには2種類あり!
縁切りには「カッターによる縁切り」と「タスペーサーによる縁切り」の2種類の方法があります。
どちらも目的は同じく屋根の重なり部分に隙間を確保し水の逃げ道をつくることです。
どちらの方法にもメリットデメリットはありますが、現在の塗装業界では安全性やコストのバランスから、タスペーサーを使った縁切りが主流となっています。
それぞれの方法について詳しくお話していきたいと思います。
3-1.カッターを使った縁切り
カッターを使った縁切りは昔から行われている従来の縁切り方法です。
塗装が完全に乾いたあと、塗料で塞がれた部分をカッターで一枚一枚切り離していきます。
メリット | デメリット |
コストが安い | 手作業のため手間がかかる |
塗膜を傷つけるリスクがある | |
屋根を傷つけるリスクがある |
3-2.今の主流!タスペーサーを使った縁切り
現在主流となっているのが「タスペーサー」を使用した縁切りです。
塗装前にスレートの隙間にタスペーサーを差し込んでおくことで適切な隙間を確保することができます。
屋根塗装は基本的に「下塗り→中塗り→上塗り」の順に3回塗装を行います。1回目の塗装「下塗り」を終えた後にタスペーサーを挿入していきます。
タスペーサーを挿入しておくことで適切な隙間が確保されますので上から塗装をしても塗料で隙間が塞がってしまうことはないのです。
1㎡あたり10個程度挿入していきますが外側からほとんど見えることはないので見た目にも問題はありません。
メリット | デメリット |
「手間が少なく作業効率がいい | カッターよりコストはかかる |
均一な仕上がり | 古すぎる屋根や反りの強い屋根には使用できない場合がある |
塗膜や屋根を傷つける心配がない |
4.縁切りの費用相場は200円/㎡~
縁切りにかかる費用相場はおおよそ200円/㎡前後が目安です。一般的な30坪のお宅の場合2万~5万円程度です。
参考に弊社での屋根塗装の縁切りを行った事例があります。ぜひご一読ください。
松原市で屋根の縁切り不足による雨漏りを適切な屋根塗装で解決
岸和田市でタスペーサーで入念な縁切りをしたスレート瓦の屋根塗り替え
大阪市東成区でスレート瓦へ遮熱フッ素塗料を使用の屋根塗装
5.見積もりに縁切りの工程が含まれているかチェック!
屋根塗装の見積もりを確認するときには「縁切り」の作業が含まれているかどうかチェックしましょう。見積書に「縁切り」や「タスペーサー」といった記載がない場合、施工されないまま塗装が完了してしまう恐れもあります。
もし縁切りが見積もりに含まれていないと…
・後で別料金を請求される可能性がある
・雨漏りなどトラブルが起きても保証対象外になる場合がある
・塗っておわりの手抜き工事になってしまうことも…
確認すべきポイント |
「縁切り」や「タスペーサー」の記載がある |
〇〇円/㎡などの具体的な費用が記載されているか |
施工方法の記載や説明があるか |
もし見積書にこれらが記載されていない場合は「縁切りはしますか?」と業者に確認しましょう。
6.まとめ
スレート屋根にとって「縁切り」は必要不可欠な重要な工程です。雨水の排水順路を確保することで屋根材の劣化や雨漏りを防ぎ、快適な住まいを維持することにつながるでしょう。
・縁切りの費用相場は200円/㎡~
・現在の主流はタスペーサーを使った縁切り
・スレート屋根には縁切りの工程が必ず必要(一部例外あり)