「うちって隣の家と距離近いけど外壁工事できる?」そんな不安ありませんか?
家と家の距離が近いと「足場は建てられるの?」「ご近所トラブルにならない?」といった不安がよぎりますよね…。
結論から申し上げると隣の家と距離が近くても基本的には外壁工事はできます!ただし、幅40cmにも満たないケースでは足場が組めない事が多くできない場合があります。
基本的には幅40㎝以上であれば、隣の家と距離が近くても大体のお宅では外壁工事は可能ですが、そのためには事前準備や近隣への配慮が大切です。
こちらの記事では隣家との距離が近いお宅でもスムーズに外壁工事を行うためのポイントを詳しく解説していきたいと思います!

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
1.隣の家と距離が近くても基本的には外壁工事は可能
2.隣の家との距離が近いことで起こりやすい3つのトラブル
2-1.足場が組みにくい・越境のリスク
2-2.塗料や音などによる隣人トラブル
2-3.職人の出入りに関するトラブル
3.隣の家との距離が近い場合にできる6つの対策
3-1.外壁工事前に必ず挨拶をしておく(予定表をお渡しする)
3-2.隣の家との境界ラインを明確に確認しておく
3-3.養生・飛散防止対策を徹底する
3-4.足場の工夫をする
3-5.足場の越境には「使用承諾書」を準備しておく
3-6.実績のある業者やトラブル時の対応をしてくれる業者を選ぶ
4.隣の家との距離が近い場合によくある質問
Q1.隣の家が協力してくれない場合どうしたらいい?
Q2.越境して足場を組むのは違法じゃないの?
Q3.養生はどこまでしてもらえる?
Q4.隣の家が不在(空き家)で連絡先がわからない!どうしたらいい?
Q5.工事中に塗料が隣の家に飛散した場合誰が責任を取るの?
Q6.工事期間中、隣の家とトラブルが起きたら自分で対応する?
Q7.騒音や作業音はどれくらいする?
5.まとめ
1.隣の家と距離が近くても基本的には外壁工事は可能
隣の家と距離が近いと「外壁工事なんてできるの?」と不安に思われる方も多いですが、基本的には問題なく工事はできます。
というのも塗装業者は狭い場所や住宅密集地などスペースが限られた場所での施工経験もあり、状況に応じた工法や足場の組み方を工夫・配慮して対応してくれるからです。
また、建築基準法第65条では「建物の外壁は隣地境界線から50㎝以上離すよう努めること」とされています。これはあくまで努力義務であり法的強制力はありませんが、多くの住宅では隣家との距離を50㎝以上確保して建てられていることがほとんどです。
さらに隣家との距離が40㎝以上確保されていれば、たいていのケースでは足場も設置でき外壁工事は問題なく行えると言えます。よほど特殊な構造や突出した部分(庇や雨樋など)がない限り施工は十分可能です。
隣家との距離が40㎝未満になると、以下のような理由から足場の設置が難しく外壁工事ができない場合があります。
・庇(ひさし)や雨樋などが干渉してしまい足場自体が通らない
・隣家との間に十分な高さや幅の空間がない
・越境の許可をもらったとしても安全性が確保できない
このような場合は外壁工事自体を断られるケースもあります。ただし、
・足場を建てられる正面や裏面など限られた箇所のみ施工する
・足場を使わずに手の届く範囲でのみ施工する
といった対応方法があるため、必ずしも工事不可能というわけではありません。気になる場合はまずは専門塗装業者に現地調査を依頼して具体的な状況を確認してもらいましょう。
2.隣の家との距離が近いことで起こりやすい3つのトラブル
隣の家との距離が近い住宅では外壁工事を行う際にトラブルが起こる場合もあります。事前にこれらのリスクを知っておくことで対策を講じることができ、トラブルを軽減することもできます。
ここでは実際によくあるトラブルを3つにわけてお話していきたいと思います。
2-1.足場が組みにくい・越境のリスク
外壁工事を行うには「足場の組立」が必須です。これは安全に作業を進めるためには必ず必要です。
しかし家と家の距離が近い場合、足場を組み立てるスペースが足りないことがあります。
このようなケースでは、やむを得ずお隣の敷地に足場が一部越境することがありトラブルの元になりやすいです。
■ よくある例
「足場の一部がうちに入っている!なんの説明もなく勝手に入られるのは困る!」→事前に「使用承諾」を取っていなかったため工事を中断。
2-2.塗料や音などによる隣人トラブル
隣家との距離が近いと、外壁工事中の塗料の飛散やにおい、騒音、振動などが影響しやすくなります。
例えば、塗装中の風向きによって塗料が隣の家の窓や車に飛ぶ可能性もありますし、高圧洗浄機の音や工具の振動が隣人の方によっては大きなストレスとなる場合もあります。
■ よくある例
「洗濯物に塗料がついている!」「赤ちゃんが寝ているのにうるさくて起きてしまう!」などの苦情トラブル
2-3.職人の出入りに関するトラブル
工事期間中は職人や業者が毎日出入りします。そのため通路や駐車スペースでトラブルが起こるケースもあります。
とくに住宅が密集した地域では、私道や共有の道路を使用する場合もありこれがトラブルの元になることも…。
■ よくある例
「通路に工具や資材が置かれていて通れない!」「職人の話声が毎日聞こえてうるさい!」など
3.隣の家との距離が近い場合にできる6つの対策
外壁工事では、隣の家との距離が近いと様々な問題が起きやすくなります。しかし事前にしっかりと対策をしておけばトラブルの多くは未然に防ぐことができます!
こちらの章では実際に効果的な6つの対策をご紹介します。
3-1.外壁工事前に必ず挨拶をしておく(予定表をお渡しする)
まず、第一に大切なのは、近隣の方へのご挨拶です。工事を行う前にスケジュールや工期を簡単にまとめた「工事予定表」を持参し丁寧にご挨拶・説明を行いましょう。
特に「工事の開始日と終了予定日」「作業時間」「大きな音が出る日程」「緊急連絡先」などを伝えておくとスムーズです。
弊社では外壁工事前に粗品を持参し近隣の方へご挨拶に伺います。その際、施主様もご一緒にお伺いできますと信頼は増すことでしょう。
外壁工事を行う1週間前にはご挨拶に伺うようにしましょう。また、ご協力いただいた感謝を伝えるためにも、再度足場解体の3日前から前日までに挨拶を行いましょう。
参考記事:外壁塗装の近隣挨拶の5つのポイント!品物・挨拶文など実例掲載
3-2.隣の家との境界ラインを明確に確認しておく
外壁工事では、敷地境界線を越えて作業を行わないことが基本です。しかし隣家との距離が近いと足場や養生シートが越境してしまう可能性もあります。
そのため以下のことを事前に確認しましょう。
・登記簿や境界杭などで境界線を確認
・越境の可能性がある場合は隣家に説明して了承を得る
境界に関するトラブルは感情的になりやすいため工事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
3-3.養生・飛散防止対策を徹底する
隣の家との距離が近い場合、塗料や埃の飛散対策は必須です。
外壁塗装では高圧洗浄の水しぶきや塗料のミスト、削った粉塵なども周囲に飛ぶリスクがあります。そのため以下のような対策が大切です。
・飛散防止ネットでしっかりと予防する
・足場全体をメッシュシートで囲む
・風の強さに応じて作業を調整する
養生を徹底することで隣家の窓や車、洗濯物などへの飛散を減らせます。
3-4.足場の工夫をする
隣家との間隔が狭いと、通常の足場設置が難しいケースもあります。その場合、狭小地向けの足場設置などの工夫が必要です。
経験豊富な業者であれば敷地の状況に合わせて柔軟な対応が可能です。
■ 単管足場やクサビ式足場を使い分ける
単管足場とクサビ式足場を使い分けて対応する工夫方法があります。
※単管足場…狭い場所や変則的な形状にも対応しやすい足場。組立には技術が必要
※クサビ式足場…一般住宅の外壁工事で使用される足場。最低でも3.40㎝の隙間が必要であるため隣の家との距離が狭すぎる場合設置不可能。
■ 隣の家のに当たらないように支柱を内側に配置する
狭い通路では足場の支柱を外側に出さず内側に寄せて組む工夫が行われます。また、作業スペースが極端に限られている場合は片面足場といって壁側だけに支柱を設ける方法もあります。
■ 部分足場や移動式足場を組む
建物全体に足場を設けるのが難しい場合は、必要な部分だけに足場を組む「部分足場」や軽量で移動可能な「移動式足場(ローリングタワー式足場」などを組み合わせて対応する方法もあります。
3-5.足場の越境には「使用承諾書」を準備しておく
やむを得ず足場の一部が隣の家に越境してしまう場合もあります。
民法第209条には土地の所有者は、境界または境界付近での建物・工作物の設置や修繕のために必要な範囲で隣地を一時的に使用することができると明記があります。(隣地使用権)
しかし、勝手に越境してはいけません。あくまでも許可を得た上で使用すべきです。
そのため、やむを得ず足場の一部が隣の家に越境してしまう場合は「使用承諾書」を準備しておきましょう。これは隣の敷地を一時的に使用させてもらうことへの同意を書面で取り交わすものです。
普段から仲の良い関係であったとしても、トラブル回避のためにも口約束ではなく書面にしておくのが安心です。
3-6.実績のある業者やトラブル時の対応をしてくれる業者を選ぶ
最後に重要なのが、信頼できる業者選びです。隣の家との距離が近い工事では作業の丁寧さや近隣への対応力が求められます。
・狭小地での施工実績があるor豊富
・近隣への挨拶や苦情対応も対応してくれる
・損害保険に加入している
これらの業者を選ぶと安心でしょう。工事の値段だけでなくトラブル時の対応力や信頼を得られる業者を見極める事が大切です。
4.隣の家との距離が近い場合によくある質問
ここからは隣の家との距離が近い場合によくある質問についてお答えしていきたいと思います
Q1.隣の家が協力してくれない場合どうしたらいい?
まずは丁寧に事情を説明し、工事の必要性や期間の短さを理解してもらいましょう。
それでも難しい場合は、無理に進めず施工方法を見直す、狭小地足場を使うなど業者と相談しながら代替案を検討します。
Q2.越境して足場を組むのは違法じゃないの?
無断で越境することは違法です。ただし、隣家の方の了承を得たうえで越境を行えば法的にも問題なく外壁工事を行うことが可能です。
その際「使用承諾書」を取り交わしておくと、なお安心です。
Q3.養生はどこまでしてもらえる?
基本的にはご自宅周辺だけでなく、隣家の窓や外壁が近ければそちらにも養生をさせていただきます。
Q4.隣の家が不在(空き家)で連絡先がわからない!どうしたらいい?
空き家の場合でも越境する際は必ず所有者の許可が必要です。まずは法務局で登記情報を調べて所有者を特定しましょう。
特定ができましたら手紙などで連絡を試みるか、不動産管理会社が連絡をしてくれる場合もあります。
また、各市町村の空き家対策窓口があればそちらに相談をしてみるのも1つの手です。
Q5.工事中に塗料が隣の家に飛散した場合誰が責任を取るの?
基本的には施工業者が責任を負います。だたし、飛散を防ぐ対策をしていなかった場合などは施主様にも一部責任が及ぶ可能性もあります。
また、損害保険(請負業者賠償責任保険)に入っている業者を選ぶと安心です。
※請負業者賠償責任保険…「工事中に誰かが怪我をした」「塗料が隣の家についてしまった」など保険会社が修理代や通院費などを補償してくれる保険です。信頼できる業者はこの保険に加入している場合が多いです。
ただし明らかに施主の指示で無理に越境したり危険な作業をさせた場合は補償対象外になることもあります。
Q6.工事期間中、隣の家とトラブルが起きたら自分で対応する?
原則としては、業者が間に入って対応します。
万が一、感情的なトラブルに発展した場合も、施主様が直接対応しない方がスムーズに解決することも多いため業者にご相談ください。
Q7.騒音や作業音はどれくらいする?
工事内容にもよりますが、足場の組立と解体・高圧洗浄時・サンダー使用時(下地処理)には大きな音がします。音の大きさは一時的ですが事前に近隣の方にお伝えしておくのがベストです。
※工程例
5.まとめ
幅40㎝以上のお宅でしたら、隣の家と距離が近くても外壁工事は可能です。
スムーズに工事を終えるためには起こり得るトラブルと対策を事前に知っておきましょう。
■ 事前にできる6つの対策
・外壁工事前に必ず挨拶をしておく(予定表をお渡しする)
・隣の家との境界ラインを明確に確認しておく
・養生・飛散防止対策を徹底する
・足場の工夫をする
・足場の越境には「使用承諾書」を準備しておく
・実績のある業者やトラブル時の対応をしてくれる業者を選ぶ