タスペーサーとは?タスペーサーがないと雨漏りするって本当?
屋根材の間には適切な隙間が必要なことをご存知ですか?
屋根には大きく分けて瓦屋根、スレート屋根の2種類存在します。
瓦屋根は瓦と瓦の重なる部分に、自然と隙間ができていますね。
スレート屋根は写真の通り、瓦屋根に比べると屋根材の重なり合う隙間の凹凸が少なくスタイリッシュな印象を受けます。
しかしスレート屋根の場合この隙間が適切な大きさでないと、雨漏りの原因となってしまうのです。
屋根材の隙間と雨漏りの関係
普通の雨では屋根材の下に雨が入り込むことはほぼありませんが、台風のような横殴りの激しい雨の場合は雨水が入り込むことがあります。
『屋根材の間に隙間があるから、そこから雨漏りするのでは?』とお考えの方もいらっしゃると思いますが、実は違うんです。
屋根材の隙間は侵入してきた雨水を外に排出したり、湿った空気の出口としての大切な役割があります。
もちろん隙間がなく行き場の無くなった雨水は屋根材の下に留まることしかできず、結果としてそこから雨漏りが生じてしまいます。
更に屋根材の隙間があっても狭すぎる場合は隙間に雨水が吸い込まれる※毛細管現象を起こします。
※狭い隙間に液体が上昇して行く物理現象。身近な例では植物が根から水や養分を運ぶ力としても存在。
スレート屋根の屋根材の隙間は数mmほどです。
たった数mmの世界ですが、適切な屋根塗装を行わないと塗料によって数mmの隙間が塞がってしまいます。
実際にお客様より『他社で屋根塗装をしてから雨漏りがするようになった』とご相談を受けるケースもあります。
この数mmの隙間を確保することが、スレート屋根の塗装を行う上で大切になってくるのはご理解頂けたでしょうか?
では実際にどのように隙間を確保するのかをご紹介していきます。
”縁切り”と”タスペーサー”
屋根材の隙間を確保する作業を縁切りといいます。
縁切りの方法も2種類あり、カッターなどで切り込みを入れる手作業で塗膜を切っていく方法と、タスペーサーによって隙間を確保する方法があります。
こちらがタスペーサーです。
プラスチックよりも強い、耐候性の高いポリカーボネイトという素材で作られています。踏んでも割れない強度があります。
費用にして1個あたり数十円で、それほど高額ではありませんが使用個数が多い為まとまった金額になります。
タスペーサーの使用個数は一般的に1㎡あたり10個を使用します。
縁切り不足により起きた屋根の不具合
雨漏り
雨が降るたびに広がる天井の雨漏り。以前に屋根の塗装を行ったとのことでしたが、屋根の点検をすると縁切りがされていません。
前項でもお話したように、スレート屋根の重なりあう部分に適切な隙間を作らないと雨水の逃げ道がありません。
これでは雨漏りしてしまうのも、頷けますね。
部屋の湿気
お客様より『屋根塗装をしてから2階の部屋がジメジメする感じがする。天気が良い日でもなんとなくカビ臭い』とご相談を受けました。
屋根の点検をしてみると、やはり縁切りされずに屋根材の隙間に雨水が溜まっている状態でした。
防水紙の劣化と野地板の腐食
屋根の下に染み込んだ雨水が、防水紙を劣化させてその下の野地板まで腐食させてしまったケースです。
ここまでの被害になると、腐食部分は全て撤去。新しく作り直す必要もある為、費用が嵩みます。
実際にタスペーサーを使用した塗装工程をみていきましょう
まずは屋根の高圧洗浄を行います。
しっかり洗浄することで、塗膜の密着を高めてくれます。
次に屋根の状態に合わせた塗料を塗ります。
いよいよ”縁切り”を行います。
塗料によってタスペーサーが劣化してしまう恐れがあるので、下塗り乾燥後にタスペーサーを挿入します。
標準的なスレート屋根材(約910mm幅)の場合は左右15㎝間隔で取り付けます。挿入しにくい箇所は写真のように工具を使用します。
タスペーサーの取り付け後、中塗りを行います。
仕上げに上塗りを行い、完成です。
タスペーサーのメリット・デメリット
前項でもお話しました縁切りを手作業で行う方法と、タスペーサーで行う方法2種類あります。
その為タスペーサーを使用しなくても縁切り自体は可能です。タスペーサー自体のコストもかかりません。
しかし手作業で行うことでまれに傷を付けてしまったり、関係ない塗膜まで剝がれてしまうことがあります。
更に作業時間がかなりかかります。(80㎡の屋根を2人がかりで約8時間)
タスペーサーで縁切りを実施すると、確かにタスペーサー自体のコストが発生します。(80㎡の屋根で作業費込3万円~)
しかし屋根をカッターで傷つけてしまう心配や塗膜の剥がれなどにも繋がらずに安心です。
手作業での縁切りと違い、作業時間も手作業の約1/3と大幅に短縮可能です。(80㎡の屋根を2人がかりで約2~3時間)
作業時間が短縮できるので、タスペーサーの費用はかかるものの全体的な費用をおさえれますね。
屋根塗装のトラブルを避ける為に
屋根塗装の業者選びの際に、見積や工程表に”タスペーサー” ”縁切り”といった記載があるかを確認して下さい。
もちろん縁切りしなくても十分な隙間を確保できている場合は縁切り不要といった事もあります。
更に日本瓦やコンクリート瓦の場合は縁切りは必要ありません。
しかしスレート屋根の場合はほとんどの場合、縁切りが必要になってきますので適切な業者選びのひとつの指標にしても良いでしょう。