外壁の仕上げ方には様々な種類があります。
その中でもスタッコ仕上げは重厚感のある質感と職人による手仕事の美しさで人気のある仕上げ方法です。
特にヨーロッパ風などの外国風の外壁を好む方に選ばれることが多く個性的な外壁にしたい方にはピッタリな仕上げ方法です。
こちらの記事ではそんなスタッコ仕上げの特徴やメリット・デメリット、スタッコ仕上げについてよくある質問などについてまとめています。スタッコ仕上げをご検討中の方はぜひご覧ください。

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
スタッコ仕上げの特徴
住宅の外壁には、意匠性を高めるためにさまざまな模様があります。例えば以下のような模様(仕上げ)があります。
それぞれ特徴がありますが、中でも「スタッコ仕上げ」は厚みと陰影によって独特の重厚感を演出できる点が魅力です。
スタッコ仕上げについて詳しくみていきましょう!
スタッコ仕上げとはセメントや石灰、砂などを混ぜた材料(モルタル)を壁に塗り、上の画像のような独特の凹凸模様をつけて仕上げる外壁工法です。
昔から用いられている伝統出来な仕上げ方法で日本でも洋風住宅や店舗の外壁などに多く採用されています。
スタッコ仕上げの最大の魅力・特徴は、なんといっても1つひとつ模様が異なる表情豊かな外壁に仕上がる点です。
吹付けやコテなど施工方法によっても見た目が大きく代わり、デザイン性も高く自由度の高い特徴があります。
また、凹凸が表面にあることで汚れが目立ちにくく経年劣化も味わいになるといった魅力もあります。
また、スタッコ仕上げは代表的な2種類の模様があります。「吹付け仕上げ」と「ヘッドカット仕上げ」です。
専用のガンを使ってスタッコ材を外壁に吹き付ける「吹付け仕上げ」(写真左)は、吹き付けたままの凹凸を活かすことで荒々しく力強い印象を与えます。
遠目から見ても存在感のある仕上がりなので立体感を活かすことができます。
また、吹付けたあと、ローラーで表面の凹凸をつぶすように押さえて模様をつける「ヘッドカット仕上げ」(写真右)もあります。
凹凸を程よく残しながらも上品で落ち着いた質感に仕上がりやさしくシックな雰囲気のお住まいにおすすめの模様です。
1-1.スタッコ仕上げのメリット6つ
スタッコ仕上げにはメリットがあります。6つに分けてお話していきたいと思います。
■ 高いデザイン性と重厚感がある
スタッコ仕上げは立体的な仕上がりで、陰影も美しく重厚感や高級感が演出できます。また、塗り方のバリエーションも多くデザイン性の高い個性ある仕上がりが魅力です。
他の外壁仕上げにはない存在感をもたらすことができます。
■ 汚れが目立ちにくい
スタッコ仕上げは表面に凹凸ができるため、少しの汚れや雨垂れでしたら凹凸模様にまぎれ目立ちにくいです。
また、ツルツルとした外壁に比べて、雨水が伝わるラインが目立ちにくいため時間が経過しても美観を維持しやすいメリットがあります。
日常の些細な汚れによるストレスを軽減してくれることでしょう。
■ 遮音・断熱性が高い
スタッコ仕上げはモルタル層が厚くなることで(10~15mm程度)、しっかりとした層ができ熱や音を通しにくくなります。夏の暑さや冬の寒さ、道路沿いにお住まいの方でしたら騒音を和らげる効果も期待できます。
■ 防火性に優れている
スタッコの原材料であるセメントや石灰は不燃性の素材であるため、万が一火災が起きても、外壁が延焼するリスクが低いのがメリットです。
そのためスタッコ仕上げは防火地域の建物にも対応可能な外壁として評価されています。
■ 通気性がある
スタッコ仕上げは表面の凹凸だけでなく内部の塗り材自体に空気の隙間があります。この空気の隙間があるため湿気を逃がす「呼吸する壁」とも言われています。
これにより壁内の結露やカビの発生を抑え通気性の高い特徴があります。とくに日本のようなジメジメとした湿気の多い地域では通気性の高い壁は大きなメリットとなることでしょう。
■ 経年劣化を味として楽しめる
スタッコ仕上げは時間とともに変化する「素材感」を楽しめる外壁です。
通常の塗装仕上げと異なり、色ムラや表面の変化が年月を経て「風合い」「味わい」として愛着が生れるのも魅力の1つです。革のカバンや財布と同じですね!
1-2.スタッコ仕上げのデメリット6つ
一方スタッコ仕上げにはデメリットもございます。6つに分けてお話していきたいと思います。
■ ひび割れ(クラック)ができやすい
スタッコ仕上げは厚みがあるため、下地の動きや乾燥収縮の影響でひび割れ(クラック)が起こりやすいデメリットがあります。特にモルタル下地の場合は構造上ひび割れができやすいです。
■ 費用が比較的高い
職人が一つ1つ手作業で丁寧に仕上げているため、材料費と施工費が高めです。
一般的な塗装と比べて1.5~2倍ほど費用がかかるケースがあります。
費用相場については後ほどお話させていただきます。
■ メンテナンスや修理が難しい
凹凸のある仕上がりのため、部分的な補修をしても模様が周囲と馴染みにくいといったデメリットがあります。また、将来的に再塗装を行うときにも技術が必要で業者によっては施工できない場合もあります。
■ 凹凸に汚れが付きやすい
先程凹凸があることで汚れが目立ちにくいとメリットをお話しましたが、反対に凹凸があることで凹凸部分に埃やゴミがたまりやすいといったデメリットもあります。
凹凸の深い部分に溜まり込むと高圧洗浄でも落としにくくなるケースもあります。
■ 建物への負担が大きい
スタッコ仕上げは厚塗りで重くなるため建物全体にかかる負荷が大きくなります。築年数が経過しているお宅や元々の構造が弱いお宅では注意が必要です。
■ 施工業者によって技術の差がある
スタッコ仕上げは職人の手仕事であるため技術が必要です。技術力の低い業者が施工すると、模様のバラツキや仕上がりの雑さが目立つ可能性があります。
1-3.スタッコ仕上げをおすすめしたい方
以上のメリットデメリット・特徴をふまえて以下の方にスタッコ仕上げをおすすめします。
■外壁に個性や重厚感を求める方
スタッコ仕上げは量産的な仕上がりの外壁ではなく、存在感と個性を大切にしたい方にぴったりな仕上げ方法です。
■ 手仕事の風合いを楽しみたい方
職人の技による一点物のデザインにこだわりたい方におすすめです。
■ 経年劣化も味として楽しみたい方
年数を重ねるごとに出る風合いや味わいを楽しみたい方にはおすすめです。変化も楽しめる方にはまさに理想的な仕上げ方法です。
■ 防火性や断熱性を重視されたい方
デザイン性だけでなく防火性や断熱性などの機能性も重視されたい方におすすめです。
2.スタッコ仕上げのやりかた
スタッコ仕上げには模様の付け方や使用する道具によっていくつかの種類にわかれます。それぞれの特徴と違いを見ていきましょう。
モルタル材を専用のガンを使い壁に吹き付けていく方法があります。比較的施工スピードも速く均一で細かな模様が形成されるのが特徴です。広範囲に施工しやすくコストを抑えたい方に人気の方法です。
費用相場は約4000円/㎡~、一般的な30坪のお宅(外壁120㎡で計算)の場合約50万円~です。
また、先程もお話させていただきましたが、吹付け仕上げの中でも2種類に分類され、ガンで吹き付けたままで仕上げになるノーマルの「吹付け仕上げと」吹き付けたあとにローラーで押さえる「ヘッドカット仕上げ」があります。
ヘッドカット仕上げはガンで吹き付けた塗料をローラーで押しつぶし丸い模様をつけていきます。
また、左官職人がコテを使って手作業で模様をつけていく方法もあります。波模様やうねりなど唯一無二の仕上がりになります。重厚感があり個性を引き出したい方におすすめの方法です。
費用相場は約6000円/㎡~、一般的な30坪のお宅(外壁120㎡で計算)の場合約72万円~です
■ 仕上げ方法比較まとめ
仕上げ方法 | 仕上がりの印象 | 工期 | 模様の自由度 | 個性 | コスト | 費用相場 |
吹き付け | 均一で細やかな凹凸 | 短い | 少 | ✕ | 中 | 約4000円/㎡~ |
コテ | 立体感・重厚感(職人の技術の左右される) | 長い | 多 | ◎ | 高 | 約6000円/㎡~ |
3.弊社でのスタッコ仕上げの施工事例
ここからは、弊社での実際のスタッコ仕上げの施工事例をご紹介していきたいと思います。
■ 羽曳野市でパナホームのお宅に吹き付けによるスタッコ仕上げをした事例
こちらのスタッコ仕上げには吹付けガンで施工しています。その後ローラーで押さえて模様をつけるヘッドカット仕上げを行っております。
4.スタッコ仕上げについてよくある質問
最後にスタッコ仕上げについてよくいただく質問をQ&A形式でまとめました。
Q1.スタッコ仕上げはひび割れしやすいって本当?
はい、本当です。スタッコ仕上げは厚塗りのためひび割れ(クラック)が起こりやすいです。とくに幅0.3mm以上のひび割れは雨漏りの原因となりやすいため注意が必要です。
Q2.スタッコ仕上げの外壁には塗装が必要?
基本的には必要です。経年劣化によって防水性が低下してしまうため、10~15年に一度を目安に再塗装をおすすめします。
Q3.再塗装するとき模様はどうなる?
凹凸模様は塗装では消えませんが、厚塗りすると細かい模様は埋まる可能性があります。模様を残したいなどがあれば業者と相談する必要があります。
Q4.汚れやカビにはどう対処したらいい?
高圧洗浄機による洗浄や外壁専用の洗剤を使って落とす方法があります。しかし汚れやカビは外壁の防水性が低下してきたというサインでもあるため再塗装のタイミングでもあります。
Q5.スタッコの模様は自分で選べますか?
はい選べます。スタッコ仕上げは多種多様の模様から選ぶことができます。
Q6.スタッコの色は自分で選べますか?
はい選べます。スタッコ仕上げでは風合いを活かしたナチュラルカラーが人気ですが、色見本の中からご自身で自由に選ぶことが出来ます。
Q7.スタッコと漆喰のちがいは?
スタッコはセメント系で硬く耐久性に優れます。一方で漆喰は石灰系で柔らかく調湿性に優れます。用途や見た目に合わせて選びましょう。
Q8.どんな外壁にもできる?
ある程度の強度がある外壁でしたら可能です。しかし下地の状態や構造によって施工の可否がかわるため現地調査が必須になります。
5.まとめ
スタッコ仕上げは高いデザイン性と重厚感、機能性を兼ね揃えた仕上げ方法です。
吹き付け・コテ・ローラーといった仕上げ方や模様によっても雰囲気や費用、施工の難易度が異なります。
特にコテ仕上げでは職人の技術やセンスが活きるため「世界にひとつだけの個性ある外壁」を求める方にはおすすめの仕上げ方法です。
ただしメリットばかりではなく費用やひび割れ、施工技術による品質の差などデメリットもございますので施工される前にしっかりと比較、検討しておきましょう!
弊社でもスタッコ仕上げの施工は可能です。何かわからないことなどあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね!