外壁を塗装する際に塗料を選ぶことはとても重要です。その中でも注目したいのが「水性塗料」と「油性塗料」の違いです。どちらを選ぶかによって塗装後の仕上がりや耐久性など大きくかわります。
両社にはそれぞれメリット・デメリットがございますが、最近の塗装業界ではほとんどが水性塗料を使った外壁塗装が行われています。
こちらの記事では「水性塗料」と「油性塗料」の違いについて詳しく解説していきたいと思います。

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
油性塗料と水性塗料の違い
油性塗料 | 水性塗料 | |
主な溶剤 | シンナー等の有機溶剤 | 水 |
匂い | 強い匂いがある(シンナー臭) | ほぼ無臭 |
耐久性 | とても良い | 油性よりは劣るが良い |
耐候性・防水性 | とても良い | 良い |
乾燥時間 | 長い | 短い |
安全性 | VOCが含まれるため人体や環境へ影響する | 人体や環境への影響はない |
扱いやすさ | 扱いにくい | 扱いやすい |
価格 | 高め | 安め |
適した用途 | 金属や海沿い、屋根など | 一般住宅の外壁など |
仕上がり | 艶や光沢感のある仕上がり | マットな仕上がり |
まずは油性塗料と水性塗料の違いを一目でわかるよう表にまとめてみました。詳しく見ていきましょう。
1-1.溶剤の違い
油性塗料と水性塗料の基本的な違いは、塗料を薄めるために使う溶剤の種類にあります。
油性塗料はシンナーなどの有機溶剤を使って塗料を希釈しています。それに反し水性塗料は水を溶剤として使用しています。
1-2.においの違い
油性塗料は有機溶剤を使用しているためシンナー臭がきつく強い匂いを発します。そのため塗装中は気分が悪くなったり頭が痛くなるといった声も聞かれます。
しかし水性塗料は水を使用しているためにおいがほとんどありません。塗装中のにおいが気にならず周囲に迷惑をかけることもありません。
1-3.耐久性の違い
油性塗料は塗膜が硬くしっかりと硬化しやすいため耐久性が長いです。(10~15年)
水性塗料は油性塗料に比べるとやや耐久性は劣りますが、近年では技術が進歩し高耐久な水性塗料も発売されているため、耐久性の違いで塗料を選定する必要はありません。
1-4.乾燥時間の違い
水性塗料は乾燥が早く作業の効率性も高いです。それに反し油性塗料は気温や湿度に左右されやすく乾燥に時間がかかる傾向があります。
特に気温が低い冬や湿度の高い梅雨の時期では施工期間が長引く傾向があります。
1-5.安全性の違い
油性塗料にはVOC(揮発性有機化合物)という光化学スモッグなどの原因となる物質が含まれており人体や環境に影響をもたらします。
しかし水性塗料はVOCが非常に少なく安全性が高いのがメリットです。小さなお子さんやペットがいらっしゃるお宅でも安心して使用できます。
1-6.扱いやすさの違い
水性塗料は扱いやすく初心者にも使いやすいです。また、塗装後のハケやローラーなどの洗浄も水で行えるためとっても楽なんです。
しかし油性塗料は塗膜が硬くひび割れしやすい傾向にあるため施工が難しいデメリットがあります。またシンナーが含まれるので作業後の保管や破棄にも注意が必要です。DIYでの取り扱いは不向きです。
1-7.費用の違い
一般的に油性塗料の方が水性塗料に比べ高価です。しかし使用する塗料のグレードによっても異なります。
1-8.用途の違い
油性塗料と水性塗料はそれぞれ得意とする用途があります。
油性塗料は屋根や金属、海沿いなど耐候性が重視される環境に適しており、水性塗料は一般住宅の外壁や学校など人が集まる場所に適しています。
屋根に水性塗料で塗装を行うと密着不良によりすぐに塗膜が剥がれる不具合が多いため屋根への塗装には不向きです。
※3章「あえて油性塗料を選択すべきパターン」にて詳しくお話します。
1-9.仕上がりの違い
油性、水性両者共に艶あり艶なしは選択できます。
しかし、油性塗料は塗膜が滑らかであるため、光沢感があるピカピカとした仕上がりになる傾向が強いです。そのため艶有りがお好みの方には向いている塗料です。
一方、水性塗料は油性塗料に比べ艶が抑えられたマットな仕上がりになる傾向が多いのです。
ですが、最近の塗料は施工方法や使用する塗料によっては艶を出すことも抑えることも可能ですので、どんな仕上がりが好みか業者と相談されることをおすすめしております。
まとめ:油性水性共に艶有り艶なしは存在するが、油性の方が艶は強い。水性の方が艶は少ない。
2.基本的には水性塗料を選ぶとまちがいない
以上の違いやメリットデメリットをふまえ、基本的には水性塗料で外壁塗装をされることをおすすめしております。その理由を以下にまとめました。
・匂いがほとんどなく環境への影響も少ないから
水性塗料はシンナーで希釈をしていないため匂いがほとんどありません。
また、有害な物質を含んでいないため環境への影響が少ないです。特に最近ではエコ意識が高まってきており環境に配慮された水性塗料を選択されるケースが多いです。
ペットやお子さんのいらっしゃるお宅では水性塗料での塗装がマストです!
・耐久性が向上しているから(油性塗料と引けを取らない)
昔に比べて昨今の水性塗料は耐久性が大きく向上しています。従来の水性塗料は油性塗料と比べ耐久性が低いと言われていましたが、技術の進歩により油性塗料と引けを取らない耐久性になっています。
特に外壁塗装をする場合、紫外線に強い水性塗料や防水機能を持った水性塗料が増えてきており、水性塗料でも十分な効果を発揮することができるのです。
・選べる色が多いから
水性塗料は色数が豊富で発色も良いためデザイン性の高い塗装も可能です。油性塗料と比べ光沢は少ないですが技術によっては光沢を出すことも可能です。
・塗装後のメンテナンスがしやすいから
水性塗料は長期にわたって塗装後のメンテナンスがしやすい塗料と言われています。汚れがついても簡単に拭くことができ、次回の塗装(再塗装)もしやすいのです。
油性塗料の場合、塗膜が硬く傷もつきやすい反面、汚れや傷がついたときに修復が難しいとされます。
・乾燥が早いから
水性塗料は乾燥時間が短いため効率良く作業を進めることができます。
外壁塗装は下塗り、中塗り、上塗りと基本的に3度塗りします。各塗装の間に乾燥期間を設ける必要があるのですが短時間で乾燥することができるので工期にも影響がありません。
・扱いやすいから
水性塗料は取り扱いやすく塗料の主成分が水であるため使用後の道具や手を簡単に洗うことができ溶剤を使わなくていいというメリットもあります。
油性塗料の場合溶剤の洗浄が必要で匂いもきつく、施主様はもちろん職人や近隣の人々にも優しい塗料と言えます。
【結論】最近の外壁塗装はほとんどが水性塗料での塗装である!
基本的に外壁塗装には水性塗料を選ぶと間違いはありません。
取り扱いやすく人体や環境への影響も少ない、また耐久性も向上しているためほとんどのケースで水性塗料で外壁塗装が施工されています。
3.あえて油性塗料を選択すべきパターン
しかし、あえて油性塗料を選択すべきパターンもいくつか存在します。
・耐候性を優先したいとき
油性塗料は水性塗料よりも塗膜が硬いため紫外線や雨風などへの耐性強いです。そのため、台風や積雪が多い地域、海風による塩害がひどい地域などはあえて油性塗料で塗装されることもあります。
・金属サイディングなどのサビが気になる箇所に塗装するとき
密着性に優れた油性塗料は防錆効果にも優れているため、金属サイディングやシャッター、鉄扉などには油性塗料で塗装したほうが、剥がれが起こりにくいとされています。
ただし、水性でも弱溶剤型の塗装では金属に対応できる製品もあるため業者と相談されることをおすすめしています。
・既存の塗膜が油性の場合
塗装の基本は同じ種類の塗料で塗り重ねる方が安全であるため、古い塗膜が油性塗料である場合、新しい塗料も油性塗料を選ぶ方が安心です。
無理に水性塗料を選ぶと、剥がれや浮きなどの接着不良が起こるリスクがあるからです。
・光沢感のある仕上げにしたい場合
光沢感のあるピカピカとした仕上がりがお好みの場合、油性塗料を選ばれる方もいらっしゃいます。
しかし最近の水性塗料は塗り方次第で光沢感を出すことも可能なため、必ずしも油性塗料を選ばなけらばならないといったわけではありません。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
外壁塗装に使われる塗料は「水性塗料」と「油性塗料」の2種類があります。それぞれメリットデメリットはありますが、現在の外壁塗装ではほとんどが水性塗料で行われています。
ただし塗る素材や条件によっては油性塗料の方が適しているケースもありますので業者と相談しながら最適な塗料を選ぶことが重要です!
油性塗料…油を溶剤とした塗料で塗料の乾燥は溶剤の揮発によって行われる。VOCを含むため人体や環境への影響があり匂いもきつい。艶がある仕上がり。
水性塗料…水を溶剤とした塗料で環境や人体に優しい塗料。VOCや匂いの発生はなし。艶のない仕上がり