外壁塗装を検討している方は「どんな塗料を使うのか」「費用はどのくらいかかるのか」「どのくらい長持ちするのか」などといった内容を気にされるのではないでしょうか?
もちろんこれらは大切なポイントです。しかしもうひとつ忘れてはいけないのが「工程の中身」です。
塗装工事にはいくつもの工程がありますが、中でも重要なのが「塗装の3回塗り」と言われている基本の工程「下塗り」「中塗り」「上塗り」です。
このうち「中塗り」という工程は、その役割や重要性をしっかりと理解されている方は少ないのではないでしょうか?
「中塗りって本当にいる?上塗りだけでいいんじゃないの?」「見た目ではわからないし手抜きされているのでは?」そんな疑問や不安を抱く方も少なくありません。実際悪徳業者の中には「中塗りを省略する」ケースも存在します。
この記事では、外壁塗装の中塗りの役割や重要性、下塗りと上塗りとの違い、中塗りを省略するとどんなリスクがあるのかなど「中塗り」についての情報をお伝えしていきたいと思います。

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
石綿作業主任者・建築物石綿含有建材調査者
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
1.外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本
外壁塗装を検討していると「3回塗りが基本です」と言われることがあります。
外壁塗装の3回塗りとは「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3つの塗装工程のことを指します。それぞれの工程には役割があり、どれか一つでも省略されたり適切に施工されなかったりすると、外壁塗装の性能が大きく低下してしまいます。
中でも「中塗り」は見た目ではわかりにくい工程であるため「中塗りって必要?」「上塗りとどうちがうの?」と疑問に思う方も多い部分です。
ですが実は中塗りこそが下塗りと上塗りのつなぎとなる重要な工程で外壁塗装の寿命や美しさを大きく左右するのです。
2.中塗りの役割は?中塗りが必要な理由と下塗り・上塗りとのちがい
下塗り・中塗り・上塗りの役割は以下のように異なります。
下塗り…下地と塗料の密着性を高め塗膜の土台をつくる
中塗り…下塗りと上塗りの密着を助け塗膜に厚みを持たせ耐久性を高める
上塗り…仕上げとして美観を整え紫外線や雨風から建物を守る
中塗りの主な役割は「下塗りと上塗りをつなぐ役割」として塗膜の厚みをつくり、耐久性・密着性を高めることです。
下塗りだけでは十分な厚みは作れず上塗りだけでは密着しにくい…
そんな塗装の隙間を中塗りがしっかりと埋めてくれるのです。中塗りを行うことで凹凸のない滑らかな下地を形成することができるのです。
■下塗りの役割は外壁と塗料の密着を高めること
下塗りは外壁と塗料の密着を高める「接着剤」のような役割があります。特に劣化が激しい外壁に塗料を塗る場合、下塗りがなければうまく定着せずすぐに剥がれてしまう恐れがあります。
女性の方でしたら共感してくださるかもしれませんが、お顔に下地を塗らず、いきなりファンデーションを塗ってもうまく密着せずすぐに汗や皮脂で落ちてしまいますよね。それと同じなんです!
■上塗りの役割は見た目や性能を担うこと
上塗りは見た目の美しさと最終的な防水性や耐候性を担う仕上げの層です。上塗りだけで色ムラなく均一な厚みを作るのは難しくその下地となる中塗りが欠かせません。
■中塗りの役割は下塗りと上塗りをつなぎ合わせること
中塗りがあることで、塗膜全体の厚みが均一になり、塗料の性能(防水性・防汚性・遮熱性など)が十分に発揮されます。また、最終的な色ムラや仕上がりの美しさにも直結するため中塗りは必要不可欠な工程です。
3.中塗りを省略すると起こるリスク
「3回塗りが基本」といっても、中には手間やコストを省くために中塗りを省略する業者も存在します。
しかしそれは大きなリスクを伴います。
3-1.耐久性の低下
※中塗りを省略したために塗膜の膨らみが生じた状態
中塗りを省略すると最も大きな影響がでるのが「耐久性」です。
中塗りは塗膜の厚みを確保するための工程です。塗装は単に色を付ける作業ではたくお住まいを紫外線や雨風から守るための役割があります。
中塗りを省略すると塗膜の厚みが足りず、外壁を守る力が不十分になります。特に高耐久塗料やフッ素塗料など性能の高い塗料であっても十分な厚みがなければ本来の性能は発揮できません。
たとえばメーカーが「この塗料は15年もちます」といってもその耐久性は規定通りの塗膜厚を確保した場合の話です。
中塗りを省略すれば、塗膜が薄くなり数年で剥がれやひび割れが生じることがあります。また、適切な塗装回数を守っていないと保証対象外になるケースもあります。
3-2.仕上がりが悪くなる
※中塗りを省略したために色ムラが生じた状態
中塗りを省略すると、見た目の美しさにも影響が出ます。
中塗りは塗膜のムラを整え、上塗りの発色や艶を引き立てる土台の役割があります。
中塗りがないと下地の色がうっすら透けて見えたり、艶が均一に出なかったり仕上がりにムラが出てしまうのです。
また、塗膜がうすくなることで表面の凹凸がそのまま残ってしまうことも…。せっかくお金をかけて塗装したのに「なんだかまだ古ぼけたかんじがする」「ムラっぽい」と感じてしまうのはもったいないですよね!
3-3.将来的に補修が必要になる
中塗りを省略した塗装は一見問題なく見えても数年後に不具合が出やすくなります。
たとえば、塗膜が早く劣化してひび割れや剥がれが起こるとそこから雨水が侵入してしまうことがあります。その結果別途補修が必要になるケースも少なくありません。
通常のメンテナンスでしたら塗装だけで済むはずが中塗りを省いたばかりに外壁の張替えや部分的な下地補修など余分な工事費用がかかることもあります。
つまり中塗りを省くとその場の費用は抑えられるかもしれませんが、長い目で見れば大掛かりな工事が必要になりその分費用も高くつく可能性があるのです。
4.外壁塗装の中塗りについてよくある質問
ここからは中塗りについてよくいただく質問をQ&A形式でお答えしていきたいと思います。
Q1.どんな塗料を使うの?上塗りと一緒?
基本的には中塗りと上塗りは同じ塗料を使います。セットで使用することで色や艶、機能が安定するように設計されています。
たとえば、シリコン塗料を採用した場合、中塗り上塗り共に同じシリコン塗料を2回重ねて塗ります。
ただし塗料によっては中塗り専用塗料がある場合もありますので仕様書や見積書を確認しましょう。
※下塗りは下塗り専用の下塗り材(プライマー・シーラー・フィラーなど)が使われます。中塗りをしっかり定着させるための接着剤のような存在です。
Q2.中塗りのタイミングと乾燥時間は?
中塗りは下塗りがしっかりと乾燥したあとに行います。乾燥不十分なまま中塗りを行うと密着不良や塗膜の剥がれの原因になります。
乾燥時間は塗料の種類や天候によって異なりますが一般的には4時間~1日程度が目安とされています。
※晴れていて気温が高い日は早く乾きますが雨や湿気の高い日は乾燥に時間がかかります。
Q3.中塗りをちゃんとやってくれるか不安。見分ける方法は?
中塗りは上から塗り重ねるため完成後は見えなくなってしまう工程です。だからこそ信頼できる業者選びが必要です。
以下は依頼者側が確認できるポイントです。
■工程ごとの写真を撮ってもらう
※南大阪ペイントセンターで実際にお客様にお渡しする工程ごとのお写真です。
信頼できる業者は、下塗り・中塗り・上塗りの各工程それぞれの写真を記録してくれることが多いです。
依頼時に「各工程の写真を見せてください」とお願いしておくと安心です。
■見積書に「中塗り」の記載があるか確認
見積もり書に「中塗り」の記載があるかどうか確認しておきましょう。
下塗り・中塗り・上塗りの3工程がそれぞれ明記されているか、それぞれの塗料の種類や費用まで記載されているか確認することで施工内容の信頼性を高めることができます。
万が一、「仕上げ塗装」などざっくりとしか書かれていない場合は詳細を質問するようにしましょう。
※実際の南大阪ペイントセンターの見積書
Q4.中塗りを省略する業者もある?
残念ながらあります。実際に3回塗りと契約していたにも関わらず実際には2回しか塗っていなかったというトラブルもあります。
欲に注意したいのが価格の安さだけをアピールしてくる業者です。見積もりは安く見えても工程を省略して材料や人件費を削減し利益を確保している場合もあります。
中塗りを省略すると深刻なトラブルに繋がるリスクがあります。
・工期が極端に短い
・工程の説明が曖昧、口頭だけ
・「3回塗り」という記載が見積もり書にない
・工事中の写真がない
これらの業者には注意しましょう。
5.まとめ
外壁塗装の中塗りは見えにくい工程でありながら、塗装の寿命・仕上がり・保護機能すべてに関わる非常に重要な工程です。
省略してもばれないという悪徳業者も残念ながら存在しますが中塗りが省略されると耐久性が大きく低下し数年で再塗装が必要になる可能性もあります。
また、色ムラや光沢のばらつきなど見た目にも大きく影響します。
中塗りがしっかりと行われているか不安なときは、施工写真の確認や中塗りと上塗りで色を変えてもらうなど対策をしっかりと行い大切なお住まいを守っていきましょう!