外壁は、毎日紫外線や雨風に晒されながら私たちの生活を守ってくれています。
そんな外壁を保護する役割が「外壁塗装」です。しかしせっかく塗装した外壁でも経年劣化とともに塗膜が剥がれてしまうことがあります。
「まだ塗装してから数年しか経っていないのにもう剥がれてきた…」「このまま放置していたらどうなるの?」そんな疑問や不安を抱えている方のためにこちらの記事では、外壁塗装に剥がれが起こる原因やリスク、対処法について詳しく解説していきます。
さらに、よくある質問もまとめておりますのでぜひご覧ください!

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
石綿作業主任者・建築物石綿含有建材調査者
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
1.外壁塗装の剥がれはなぜ起こる?
1-1.施工不良
1-2.外的要因
1-3.経年劣化による剥がれの原因
2.剥がれを放置すると起こるリスク3つ
2-1.放っておくとどんどん剥がれが進行する
2-2.塗膜が外壁を保護できなくなる
2-3.雨漏りの原因になる
3.施工不良によって剥がれが生じた時の対処法
3-1.保証書を確認する
3-2.現状を写真に撮っておく
3-3.業者に連絡し点検してもらう
3-4.業者が対応してくれない場合は消費者センターなどに相談する
4.経年劣化によって剥がれが生じた時の対処法と費用
4-1.部分補修
4-2.外壁全体の再塗装
5.外壁塗装の剥がれについてよくある質問
Q1.DIYで剥がれの補修はできる?
Q2.剥がれを防ぐためにできることはある?
Q3.剥がれている部分だけ塗りなおしたら目立つ?
Q4.塗装が剥がれていると家の査定に影響ある?
Q5.外壁が白く粉ふいているけどこれも剥がれ?
Q6.ベランダ側だけ塗装が剥がれているけどなぜ?
6.まとめ
外壁塗装の剥がれはなぜ起こる?
外壁塗装の剥がれにはいくつかの原因があります。
大きく分けると「施工後すぐに起こる施工不良」「年数が経ってから起こる経年劣化」「外壁要因」の3種類です。
1-1.施工不良
塗装してから数年で塗膜が剥がれてくる場合は施工不良が疑われます。本来ならば塗料の寿命である10~15年程度は剥がれが生じません。
具体的には以下の原因が考えられます。
■下地処理の不足
古い劣化した塗膜やカビや藻などの汚れをしっかりと除去せずに塗装すると、塗膜がうまく密着せずに早期剥離が起こります。
■洗浄不足
外壁塗装を行う前に、高圧洗浄機で外壁を洗浄していきます。
その際、外壁についた汚れや古い塗膜を清掃せずにいきなり塗装をしてしまうと塗膜と外壁の密着性が低下しすぐにボロボロと塗装が剥がれてしまうのです。
■乾燥時間の不足
下塗り・中塗り・上塗りの間に十分な乾燥時間を設けないと塗膜が内部から浮いてしまい剥がれやすくなります。しっかりとした仕上がりを求めるには半日~1日程度乾燥時間が必要になります。
■外壁に見合った塗料を選べていない
外壁の素材や既存の塗膜に合っていない塗料を使用すると、密着不良によって剥がれが生じます。また、塗料は「下塗り専用」や「仕上げ専用」など用途にわけて塗料を選定します。
■規定の塗布量を守れていない
塗料の塗布量はメーカーによって規定が定められています。メーカーから仕入れた缶に対し、混ぜる水の量も細かく決められています。
さらにこれらの規定に加えて、気温や湿度などの環境条件も加味して考慮しなければ適切な塗装ができません。
■塗装回数が守られていない
外壁塗装をするときは基本的に「下塗り・中塗り・上塗り」と3回塗りを行います。
ですが下塗りをせずいきなり上塗りをしてしまったなど規定回数が守られていない場合は、適切な塗膜の厚みを形成できず、すぐに剥がれが生じてしまうことがあります。
こうした場合、施工業者に保証や補修を依頼できる可能性があるので、契約時の保証内容を確認しましょう。
のちほど、対処法についてお話させていただきます。
1-2.外的要因
自転車、植木、素人の方による高圧洗浄、強風時の物の衝突などで塗膜が傷つきそこから外壁塗装の剥がれが起こることがあります。
特にモルタルやALCの外壁では衝撃時に繊細なクラック(ひび割れ)が起こりやすく剥がれが起こる原因になります。
■こんな場面で起こりやすい外壁塗装の剥がれ
・自転車や三輪車がぶつかった
・台風や強風で植木鉢、ゴミ箱、看板などが飛んできた
・高圧洗浄を近距離で長時間当ててしまった
・子供が外壁にボールを当てて遊んでいた
・外壁に物を立てかけて擦ってしまった
…など
1-3.経年劣化による剥がれの原因
一方で、塗装から10年以上が経過して剥がれてくる場合は、経年劣化によるごく自然な症状である可能性が高いです。
■紫外線・雨風・気温差によるダメージ
外壁は24時間365日、紫外線や雨風の影響を受け気温差によるダメージも受けています。
そのため年月をかけて塗膜は徐々に劣化していき密着力が弱まり剥がれやすくなります。
■外壁素材の動きによるひび割れ
モルタルやサイディングなどの素材は収縮と膨張を繰り返します。細かなひび割れから雨水が侵入し塗膜が浮いて剥がれてくることもあります。
■塗料の耐用年数が過ぎた
使用した塗料の種類によって耐久年数は異なり、寿命を迎えると自然と塗膜が劣化・剥離していきます。
【参考】各塗料別の耐用年数
このような場合は、定期的な塗り替えタイミングです。
2.剥がれを放置すると起こるリスク3つ
剥がれが少しでも確認された場合、そのまま放置してしまうのは危険です。以下のようなリスクが生じます。
2-1.放っておくとどんどん剥がれが進行する
塗膜の一部が剥がれると、その周辺も密着力が低下している可能性があり、紫外線や雨風の影響で剥がれがどんどん広がっていきます。
早期対応しないと部分補修で済んだはずの工事が全面補修になってしまうケースも…。
2-2.塗膜が外壁を保護できなくなる
塗膜は見た目の美しさだけでなく、外壁を水分や汚れから守る役割があります。剥がれた部分は無防備な状態となり雨水が染み込みやすくなり外壁を守る力ないといった「危険な状態」なんです。
無防備な外壁は雨や湿気をどんどん吸収し劣化の悪循環が止まりません。
2-3.雨漏りの原因になる
塗膜が剥がれると、ひび割れやジョイント部分から水が侵入しやすくなります。
そのまま放置していると内部の防水層まで劣化し雨漏りや腐食・シロアリ被害の原因となります。こうなると塗装だけでは補いきれず修繕費が高額になる恐れがあります。
上記の写真は外壁塗装の剥がれによって生じた室内の雨漏り跡です。
3.施工不良によって剥がれが生じた時の対処法
ここまで外壁塗装の剥がれが起こる原因とリスクについてお話してまいりました。ここからは施工不良によって剥がれが起きた時の対処法について解説していきます!
3-1.保証書を確認する
外壁塗装の剥がれが見つかりましたら、まずは保証書を確認しましょう。
■なぜ保証書を確認するの?
施工後に不具合(剥がれや浮きなど)が起きた場合でも保証の範囲内であれば無償で補修を受けられる可能性があるからです。
■保証書はどこにある?
一般的には工事完了後に業者から渡される書類の1つとして契約書類や完了報告書と一緒に保管されていることが多いです。ファイルや封筒にまとめて渡されている場合もあるので自宅の保管場所を確認してみましょう。
■保証書は誰からもらう?
外壁塗装を依頼した業者から発行されます。業者によってはメーカー保証と施工店独自の保証書の2種類がある場合もあります。
■保証書を確認したらどうしたらいいのか?
保証書の中に記載されている「保証期間」「保証の対象範囲」などを確認しましょう。もし施工不良による剥がれが保証対象に含まれていそうな場合は、すぐに業者に連絡し対応を依頼しましょう。
3-2.現状を写真に撮っておく
工事のやり直しにおいて、無償で補修をするか有償で補修をするかはトラブルになりやすい事例です。
そのため、剥がれが起きた時は「いつから」「どのように」「剥がれの範囲はどのくらい」など詳細を写真に記録しておき証拠として残しておきましょう。
■なぜ写真に残しておく必要があるのか
時間が経つと劣化が進行し、当初の状態がわからなくなることがあります。施工不良を証明するためにも発見時の状態を記録しておくことが必要です。
また、施工業者や保険会社に状況を説明する際、写真があると状態を的確に伝えられスムーズに対応してもらいやすくなります。
万が一、業者との認識に違いが出た場合にも記録があることでトラブル回避に役立ちます。
3-3.業者に連絡し点検してもらう
写真で証拠を残した後は、外壁塗装を行った業者に連絡をして「外壁が剥がれている」ことを早急に伝え点検に来てもらいましょう。
その際の点検は無料で行われる業者がほとんどです。
「本当に剥がれが生じているのか」「施工不良での剥がれであった場合対応はどのようにしてくれるのか」「保証は適用されるのか」対応方法を伺いましょう。
その際、口約束だけでなく書面での約束を行っておくと安心です。
3-4.業者が対応してくれない場合は消費者センターなどに相談する
もし業者が対応してくれない場合は消費者センターや第三者機関に相談しましょう。
特に「住まいるダイヤル(住宅リフォーム紛争処理支援センター)」では広い知識を備えた一級建築士の資格を持つ相談員が対応してくれます。
また、相談内容によっては、専門家相談や紛争処理をご利用いただくことができるのでとてもおすすめです。
■主な相談先
住まいるダイヤル(住宅リフォーム.紛争処理支援センター)
国民生活センター
弁護士
各自治体の相談窓口(以下に南大阪ペイントセンター近辺市町村の窓口まとめました)
【松原市】
都市整備部 まちづくり推進課(都市計画・空き家・リフォームに関する窓口)
https://www.pref.osaka.lg.jp/o130160/jumachi/osaka_akiya/soudan1.html#Matsubara
大阪府住宅相談室(府全体の住宅相談窓口)
https://www.pref.osaka.lg.jp/o130160/jumachi/sodan/index.html
【羽曳野市】
都市開発部 建築住宅課 住宅政策推進室(リフォームや建築相談などを一括で対応)
https://www.pref.osaka.lg.jp/o130160/jumachi/osaka_akiya/soudan1.html#Habikino
建築住宅課(市役所窓口)
https://www.city.habikino.lg.jp/soshiki/toshikaihatu/kenjyuka/841.html
【藤井寺市】
都市整備部 都市計画課(空き家・住宅相談等)
https://www.pref.osaka.lg.jp/o130160/jumachi/osaka_akiya/soudan1.html#Fujiidera
【堺市】
堺市住宅専門家相談(リフォーム・修繕相談)
https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/jutaku/jutaku/sodan/index.html
osaka-angenet.jp+3mansion-support.jp+3osaka-angenet.jp+3
【大阪市】
大阪市立 住まい情報センター(住まい全般の相談対応)
https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/page/0000370830.html
建築相談室(大阪府建築士会 面談対応)
※事前予約必要
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000011968.html
4.経年劣化によって剥がれが生じた時の対処法と費用
施工不良ではなく、外壁塗装の剥がれが経年劣化による自然な剥がれである場合、対処法は「部分補修」か「全体の再塗装」です。
4-1.部分補修
剥がれた箇所だけを補修・塗装する方法。工事期間が短くて費用も抑えられますが色ムラが出る可能性があり美観にこだわる方には不向きです。
また、周辺の塗膜も劣化していると再発しやすく外壁全体の寿命を延ばすわけではないため、あくまでも応急処置の方法です。
費用目安は、外壁塗装の剥がれが経年劣化による自然な剥がれである場合、約3万円~です。(足場を設置する場合は別途足場代が必要)
4-2.外壁全体の再塗装
剥がれの原因が経年劣化で、かつ他の部分にも劣化や色褪せ、チョーキング現象が出ている場合は全面塗装が必要です。
外壁全体が新しくなるためお住まい全体の防水性や耐久性が向上し、色ムラもなく見た目が美しく仕上がります。
費用目安は30坪のお宅で95万円~です。
参考記事:30坪の外壁塗装の相場は95~115万!実例を基にわかる費用の実態
■判断の目安
経年劣化による剥がれの場合、問題は剥がれている部分だけとは限りません、見えているのは一部でも周囲と同じスピードで劣化が進行している可能性もあります。以下は判断の目安です。
状態 | 対処の方向性 |
剥がれが1.2箇所、小規模で他の塗装はしっかりしている | 部分補修も検討可能 |
剥がれが複数個所、チョーキング現象も出ている | 全面塗装を検討すべき |
ひび割れやコーキング劣化も同時に見られる |
全面塗装+下地処理+補修が必要な可能性あり
|
業者にお住まいの状態を確認してもらい、再塗装と部分補修のどちらが適しているかを見極めてもらいましょう。
5.外壁塗装の剥がれについてよくある質問
最後に、外壁塗装の剥がれについてよくある質問をQ&A形式でお答えしていきたいと思います。
Q1.DIYで剥がれの補修はできる?
可能ではありますが、色合わせや下地処理の難易度が高く、仕上がりにムラが出る可能性があります。また、再度剥がれが起こり結局は業者に依頼をしなければならなくなったといったケースが多いためDIYはおすすめしておりません。
また、誤ったDIYを行ってしまうと結果的に建物の耐久性が低下してしまうことがあります。
▼実際にあった事例
剥がれを自分でDIYした。だけどその時に雨水の流れを変えてしまい雨水の逃げ道を塞いでしまった。そのため雨がどんどん溜まり雨漏りを引き起こしてしまった。
このように剥がれを補修するためにしたDIYが、かえって建物の耐久性を低下してしまうリスクもあるのです。
Q2.剥がれを防ぐためにできることはある?
はいあります。
・外壁の劣化は放置せず定期的に外壁の状態を確認する
・信頼できる業者を選ぶ
・耐久性の高い塗料を選び塗膜の寿命を高める
など剥がれを予防することができます。
Q3.剥がれている部分だけ塗りなおしたら目立つ?
周囲との色差が出る可能性が高く、見る角度や光の加減でつぎはぎのように見えることもあります。見た目重視の場合は全面塗装がおすすめです。
Q4.塗装が剥がれていると家の査定に影響ある?
あります。塗膜の剥がれ(劣化)は「家のメンテナンスがされていない」「防水機能が低下しているサイン」とみなされ、査定額が下がる原因になります。
Q5.外壁が白く粉ふいているけどこれも剥がれ?
それは「チョーキング現象」と呼ばれるもので塗膜が劣化し粉状になっている状態です。今はまだ剥がれではありませんが放置すれば剥がれにも繋がります。
Q6.ベランダ側だけ塗装が剥がれているけどなぜ?
ベランダ側だけ剥がれているのは、その面紫外線や雨風のダメージを強く受けているからです。外壁は日当たりや風通しによって劣化スピードが異なります。
特にベランダは風通しの悪さや湿気のこもりやすいため塗膜がふやけたり膨れて剥がれが起こりやすいケースがあります。
6.まとめ
外壁塗装の剥がれは見た目の問題だけでなく、お住まいの寿命や防水機能にも大きくかかわる重要なサインです。
施工後すぐに起こる場合は業者の施工不良、10年を超えるようなら経年劣化の可能性が高いです。放置すると塗装だけでなく外壁材や内部まで傷み最終的に高額な修繕費が発生するケースも少なくありません。
少しでも剥がれを見つけたら、まずは業者による点検を受け、補修や塗装を検討しましょう。