外壁塗装は家の美観性や耐久性を保つとても大切な工事です。
ですが、契約内容や費用・仕上がり・近隣トラブルなどさまざまなトラブルが起こることがあります。
実際に「見積りより高額な追加料金を課された」「塗りムラや思ってた色とちがう」「近所とのトラブルがあった」など事例も報告されています。
こちらの記事では、外壁塗装で起こりやすいトラブルの内容や実際にあったトラブル事例などを紹介し、事前にできる対策や万が一の相談先までまとめています。
安心して外壁塗装を進めるためにぜひご一読ください!

榎本悟
一級塗装技能士・外装劣化診断士
1998年に「南大阪ペイントセンター」を創業し、住宅塗装の専門家として20年以上の経験を持つ。外壁診断や雨漏り診断の豊富な知識を活かし、耐久性と美観を両立させた高品質な施工を提供。さらに、窯業サイディング塗替診断士や雨漏り診断アドバイザーの資格も取得し、住宅の外装全般に関する幅広いアドバイスを行っている。

橋本卓哉
石綿作業主任者・建築物石綿含有建材調査者
学生時代に塗装業に携わり、大学卒業まで職人として経験を積む。卒業後は外装リフォームの営業・現場管理に従事し、これまでに1,000棟以上の施工を担当。豊富な知識と現場経験を活かして外装診断・施工に取り組んでいる。
1.外壁塗装のトラブルは年間1500件前後起きている
2.外壁塗装で起こりやすいトラブル
2-1.契約や費用に関するトラブル
2-2.仕上がりに関するトラブル
2-3.ご近所とのトラブル
3.実際にあった外壁塗装のトラブル事例
3-1.訪問販売業者によるトラブル(出典:国民生活センター)
3-2.契約通りに外壁塗装をしないトラブル(出典:神戸新聞)
3-3.無許可で工事をしたトラブル(出典:朝日新聞)
3-4.足場を利用して盗撮トラブル(出典:FNNプライムオンライン)
4.トラブルを避けるためにできる対策10選
4-1.複数の業者から相見積もりを取る
4-2.資格や許可の有無を確認する
4-3.保証やアフターフォローを確認しておく
4-4.見積書の内訳を細かくチェックする
4-5.口約束だけでなく書面に残す
4-6.追加費用の有無を確認しておく
4-7.近隣への挨拶は必ず行う
4-8.工事スケジュールを共有し定期的にチェックする
4-9.不安な点はその場で確認する
4-10.施工状況を写真で記録する
5.万が一トラブルになった時の相談先
6.まとめ
外壁塗装のトラブルは年間1500件前後起きている
外壁塗装は日本全国で毎年多くのお住まいで行われています。
具体的な軒数の公的データは公開されていませんが、日本塗装工業会によると塗装工事の完成工事額は約1兆円にのぼるとされ、これは年間数十万軒のお宅で外壁塗装が施工されている規模と推測されます。
一方でトラブルも報告されており住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)の統計によると2023年度のリフォーム相談は12,011件。そのうち6割以上がトラブル相談であり、さらに外壁・屋根が全体の25%前後を占めています。
つまり、外壁塗装に関するトラブル相談は、年間で約1,500件前後にのぼると考えられます。
施工件数が多いため、割合にすれば1~2%と小さく感じますが、実際に数にすると毎年数千件規模で相談が寄せられているのです。
つまり、「自分は大丈夫だろう」と思っていても、誰にでも起こり得る身近な問題だと言えるでしょう。
2.外壁塗装で起こりやすいトラブル
ここでは外壁塗装中によく起こりやすいトラブルについてまとめています。
2-1.契約や費用に関するトラブル
外壁塗装で最も多いトラブルのひとつが契約内容や費用に関するトラブルです。
たとえば、見積もり段階では「100万円程度」とされていたのに実際の請求額は150万円になった、などといったケースです。
これは追加工事や材料費の上乗せが明確に説明されていなかったことが原因です。
また、契約書を交わさず口約束だけで契約してしまうと、工事内容や保証をめぐってトラブルになりやすいです。
「雨漏りが起きたときに保証してくれる」と言っていたのに対応してくれなかったなどのトラブルもあります。
さらに、訪問販売やインターネット広告を通じて契約した場合、「今だけの特別価格」「追加料金を無料にします」などと言って契約を迫ることがあります。冷静に判断せずに契約してしまうと、あとで不要なオプションで高額請求されてしまうトラブルもあります。
■契約や費用に関するよくあるトラブル例
・見積もりより高額な費用請求があった
・不要なオプションや追加工事を契約させられた
・契約書に明記されていない内容で工事が進められた
・支払いタイミングや方法が不明確だった
・口頭での説明(約束)と実際の契約内容が異なっていた
・工事後の保証やあふらーフォローが不十分だった
・当初聞いていた工期よりかなり遅れが生じている
・見積書の詳細が不透明(一式表記が多い)
・契約した業者が倒産してしまった など
2-2.仕上がりに関するトラブル
外壁塗装の仕上がりに関するトラブルは、実際に工事が始まってから、もしくは工事が完了してから気付くことが多く、見た目や耐久性に直結するため非常に重要です。
例えば「色味がイメージとちがった」「塗装がすぐに剥がれてしまった」「塗りムラが目立つ」などといったケースが多いです。
これらは塗料の選び方や施工技術、作業環境によって左右されます。特に下地処理が甘いとすぐにひび割れや剥がれなどの施工不良が生じ、再塗装が必要になります。
■仕上がりに関するよくあるトラブル例
・塗料の色味がイメージとちがった
・すぐに剥がれやひび割れ、水ぶくれなど施工不良が起きた
・塗りムラや垂れが目立ち見た目が悪い
・施工回数が契約通りでなく塗膜の厚みが不均一だった
・外壁に傷や破損が生じた
・高圧洗浄の水が室内に入った
2-3.ご近所とのトラブル
外壁塗装はご自身のご家庭だけじゃなく周囲の環境にも影響を与える工事です。
足場工事や作業音、塗料の飛散や匂いなどで近隣の方にご迷惑をかけてしまうことがあります。
特に事前に挨拶をしていなかった場合や工事中のトラブル対応に問題があった場合はクレームや関係の悪化に発展することがあります。
工事の期間や騒音についてきちんとお伝えし、誠心誠意配慮することがトラブル防止につながります。
■よくあるご近所トラブル例
・作業者の駐車で通行や注射に迷惑をかけた
・塗料やほこりが隣家に飛散した
・騒音や作業時間の影響でクレームがあった
・事前挨拶や連絡を怠り関係が悪化した
・工事中のゴミや資材の置き場所でトラブルがあった
・職人の配慮やマナー不足
3.実際にあった外壁塗装のトラブル事例
実際に外壁塗装で発生したトラブルにはどのようなケースがあるのでしょうか?こちらの章では実際の新聞やニュースをもとに代表的な事例をいくつかご紹介していきます。
3-1.訪問販売業者によるトラブル(出典:国民生活センター)
営業マンの説明を鵜呑みにして契約したところ、不要なオプション工事を追加され、最終的に見積もりより数十万円も高額な請求がきました。
こうしたケースでは「契約書に明記されていない工事」や「口頭説明しかきいていない」などトラブルの原因になることが多く注意が必要です。
出典:3-1.訪問販売業者によるトラブル(出典:国民生活センター)
3-2.契約通りに外壁塗装をしないトラブル(出典:神戸新聞)
「特殊なコーティング剤で工事をすれば20年はきれいな壁のまま」などと説明し、契約書を締結。
しかし下請けの施工会社に一部のコーティング剤を使用せずに工事をさせ、137万円を詐取した疑いで兵庫県加古川市のリフォーム会社の社長ら3人が逮捕されました。
出典:https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber2/202409/0018089282.shtml?utm_source=chatgpt.com
3-3.無許可で工事をしたトラブル(出典:朝日新聞)
スーパーサラリーマン清水と名乗る容疑者ら4人が建設業の許可を得ずに無許可で高額な工事を請け負って逮捕されたトラブルがありました。
※建設業法は500万円以上の工事を請け負う業者に、国や都道府県から許可を得るよう義務付けている。
また、リフォームの依頼者から得ていた代金は、他社が同じ工事をした場合と比べてかなり高額で、代金のうち実際に工事にかかった費用は3割程度だったそうです。
出典:https://www.asahi.com/articles/AST3C1VLRT3CUTIL008M.html?utm_source=chatgpt.com
3-4.足場を利用して盗撮トラブル(出典:FNNプライムオンライン)
大阪市のマンションの外壁塗装中に塗装工の30代の男が足場を利用して室内にいる女性6人の裸をスマーフォンで盗撮。
盗撮目的の動画が押収されたスマホから見つかり、逮捕されたトラブルがありました。
出典:https://www.fnn.jp/articles/-/725378?utm_source=chatgpt.com
4.トラブルを避けるためにできる対策10選
トラブルを避けるためにできる事前対策を10個にまとめました。トラブルなく安心して外壁塗装を終えるために確認しておきましょう。
4-1.複数の業者から相見積もりを取る
外壁塗装の費用には相場があります。業者によって提示金額や工事内容が異なる事も少なくありません。
ですが1社だけではその見積もり費用が高いのか安いのか判断できません。
最低でも2.3社以上から見積もりをとり、価格だけでなく「使用する塗料の種類」「施工内容」「保証内容」などを比較しましょう。
相場と大きくかけ離れた極端に安い見積もりは手抜き工事や後から追加料金が加算される場合があるので注意が必要です。
4-2.資格や許可の有無を確認する
※南大阪ペイントセンターの資格や許可
外壁塗装は「資格がなくても施工できる」ため、業者の質に差がでやすい業界です。信頼性を見極めるには建築業許可を持っているか、資格を保有しているか確認することが重要です。
資格や許可の有無はその業者が一定の基準を満たしている証でもあり安心材料のひとつになります。
4-3.保証やアフターフォローを確認しておく
施工工事は「終わったらそれでおしまい」ではありません。数年経ってから不具合がでることもあるため、保証内容を契約前に必ず確認しておきましょう。
「塗装保証〇年」「施工後の無料点検」などのアフターフォローがあるかどうかも確認しましょう。
4-4.見積書の内訳を細かくチェックする
見積書に「外壁塗装一式〇万円」としか書かれていない場合、あとから追加費用が発生するリスクがあります。良い見積書例として、どのくらいの面積に塗装をするのか、しっかりと数字で見てわかります。
材料費・人件費・足場代・下地処理費用などがきちんと細かく明記されているか確認しましょう。
4-5.口約束だけでなく書面に残す
サービスでここも塗っておきますよ!といった口頭でのやり取りは後からトラブルの原因になりがちです。必ず契約書や追加工事の覚書など書面に残してもらいましょう。
契約内容を第三者が見てもわかる形にしておくことが万が一トラブルになった際の大切な証拠になります。
4-6.追加費用の有無を確認しておく
外壁塗装では、足場を組んでから初めてわかる劣化や破損が見つかることもあります。その際に「追加費用が必要です」と言われてトラブルになるケースもあります。
事前に「追加費用が発生する条件」や「その場合の金額の目安」などを確認しておくことで後々の金銭トラブルを防ぐことができます。
4-7.近隣への挨拶は必ず行う
工事では騒音や塗料のにおい、車両や人の出入りなど近隣の方に負担をかけることも少なからずあります。
事前の業者と一緒に近隣へ挨拶周りをして工事の内容や期間、作業時間帯などを伝えておくと苦情やトラブルを防ぐことができます。
4-8.工事スケジュールを共有し定期的にチェックする
外壁塗装は天候の影響を受けやすく、予定通りに進まないこともあります。事前の工事スケジュールを受け取り、工程ごとに進捗をチェックすることが安心につながります。
定期的に確認することで「いつまでたっても工事が終わらない」などといった不安やトラブルも防げます。
4-9.不安な点はその場で確認する
作業内容や費用について少しでも不安や疑問をかんじたら遠慮せずすぐに業者に確認しましょう。「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことでも確認しないまま進めると後から大きなトラブルにつながります。
誠実な業者であれば、どんな些細な事でも丁寧に答えてくれますよ!ご安心ください。
4-10.施工状況を写真で記録する
工事の前後や各工程を写真に残しておくと、上がりや施工の状況を後から確認できます。
もし手抜きや契約違反があった場合、証拠としても有効です。また工事後に家族や次のリフォーム業者に説明する際にも役立ちます。
5.万が一トラブルになった時の相談先
それでも万が一トラブルになってしまった場合は、一人で悩まずに必ず第三者やプロに相談してください。
以下の弊社ページでは、もしトラブルになった場合の相談先を5選まとめています。ぜひご参考にご覧ください。
参考:外壁塗装でトラブルが発生したら?相談先5選をプロが解説
6.まとめ
外壁塗装はお住まいの美観や防水性を保つために欠かせない工事ですが、契約や費用、仕上がり、ご近所対応などで思わぬトラブルが発生することがあります。
実際に多くの事例も報告されており決して他人事ではありません。
しかし事前に正しい知識を持ち、信頼できる業者を選ぶことでこうしたトラブルの多くは防ぐことができます。
それでも万が一トラブルが起きてしまった場合には、一人で悩まず消費者センターなど第三者に相談することが大切です。
安さや営業トークだけに騙されず、納得いく工事を選ぶことが安心して外壁塗装を行う第一歩になります。